『アメトーーク!』や『ロンドンハーツ』で
音響効果を一手に引き受けている栗田勇児さん。
BGMや効果音など、普段あまり意識することがない
"TVの中の音"の存在意義や聞けばなるほど!な
テクニックを語っていただきました。
中野 栗田さんが最初に自分がやったなと思う音づけのパターンってありますか?
栗田 うーん。いちばん早くやったって思えるのは『ロンドンハーツ』のスティンガーとかブラックメールの企画の時に、コーナー1本全部をデジタルロックとかビックビーツとかで起承転結をつけて、音楽だけで見せるっていう。
中野 そういえば普通はナレーションで果たしてどうなるのか!みたいに煽り倒したりするんだけど、スティンガーのネタばらしの前とかナレーションがなかった。しかもずいぶん長い尺で、3、40秒はあった。あれは新しかったですね。あの映像と音楽だけでグワーッと見せていくやり方は斬新だなぁと思いましたね。
栗田 あの頃は番組もすごく尖ってたんで、僕もベタな曲とか歌謡曲とかは一切やらないで、誰も絶対知らないカッコイイ曲でやろうと思ってやってましたね。流行りそうなものを、ほかの人が使う前に使いきるというのがポリシーで。
中野 その空気感は伝わってたと思いますね。あの頃は本当に音づけもさることながら企画自体もかなり尖ってた。会議でよくそんな話になるんですけど、「彼氏のためにやるキッス」なんて今絶対できないじゃないですか。だってある意味、売春ですからね(笑)。『ロンドンハーツ』は企画だけじゃなくて音のつけ方もあの頃に比べるとマイルドになっちゃった感じですか?
栗田 前は女性タレントとかそんなに出てなかったけど、今は格付け(する女たち)とかもあるし、演出パターンも変化してるので、音づけも変わってきてますね。あとはまぁ、歳をとってますから。
中野 『ロンドンハーツ』でいえば、単純にあの頃から10才、歳とってる。
栗田 若い頃は自分の感覚とか好きな曲でやりたいとかしか考えてなかったんですけど、人間20代、30代と丸くなってくるじゃないですか。それはキャパが広がったということかもしれないんですけど、年数重ねていくごとに、昔みたいに自分のこだわりを押すというよりは、演出とか番組を優先するようになったというか。
中野 それは自分の感覚だけではなくて、他の人の感覚とか視聴者の感覚を優先できるだけの幅ができたということですよね。勝負の手数が増えたっていうか。
栗田 だから加地さんとよく話すのが、『ナイナイナ』をやってた頃って編集も今だったら絶対使わない画を使ってたり、脱線まで使ってて、僕がつけた音も全部直球フルスイングでうわぁ〜って思うんだけど、やっぱり勢いあるよね、と。今は経験値とかテクニックとかついてるからあれをやれって言われてもできないっていうのはあって。
中野 若い頃の無知が生み出すものって確実にありますね。でも逆に歳とったからできることもある。例えば最近の『アメトーーク』で、次長課長と中川家と友近のミニコントの時に、「コンビ同士座ってくださいよ」って席を移動するくだりがあったじゃないですか。笑いになかなか繫がらず、大丈夫か大丈夫か、って思わせて、結果、やっぱりグダグダのまま終わってしまう、という(笑)あれには笑ったなぁ。あの編集って、熟練の技だなって思うんですよ。余裕がないディレクターはあそこは落としちゃう。だって成立してないから(笑)
栗田 昔はもう全速力だったんですけど、だんだん変化球とか緩急つけないと(企画もオチも)生きてこないっていうのも判ってきたのかな。
中野 攻め方が判ってきたということだと思いますよ。ところで僕は、緊迫感のあるシーンにいまだにジョーズのサントラがかかったり、寿司の情報に「スシ食いねェ!」が流れたりするとその安直さにガッカリしちゃうんです。またそのパターンかって。その安直さは何も進化させない。最初にそれをつけた人はいいとして、記号的に使うのはどうなんだろうって個人的に思ってて。
栗田 おっしゃってることは判るんですけど、バラエティをやってると判りやすい、ベタなものをディレクターや演出に求められることもあるんで、そういう時はやらざるを得ないんじゃないですかね。番組のテイストによっては、それが好ましい場合もあると思うし。深夜だとターゲット層を狭められるけど、ゴールデンだと視聴者層を広く想定しなくちゃいけないんで。
中野 狙いや意図がある場合と、そうじゃない場合があると思うんです。て言いながら、以前、僕がやってた最先端の科学を紹介する番組で、寿司が出た画に「スシ食いねェ!」が流れてきて、さすがに会議であれはないんじゃないかって言っちゃったんだけど(笑)。ディレクターは「ゴールデンの番組なんだからベタにした」と言うんだけど、ゴールデンの番組をつくるってそういうことなのかなぁ、と。別に「スシ食いねェ!」自体が悪いわけじゃなくて、番組にコンセプトがない感じが引っ掛かるんですよ。
栗田 難しいですね。ちなみに僕はこの仕事をやってて「スシ食いねェ!」を使ったことは1度もないですけど(笑)。